AYUMI GALLERY

田中屋

青山 恭之


川越の蔵造りの町並みには、いくつかの洋風の古い建築が残っている。この田中屋(菓子商)もそのひとつだが、何度か持ち主が移り変わった経歴を持つ。
道を隔て、ファサードが真正面から見える位置でスケッチブックを構える。上部シンメトリカルな構成を破って店の入り口を大きく開け、アーチで受ける。そして自由な細部。なかなか愛らしい。建築家の名は残っていないが、おそらく彼は、ひとり楽しみながらこの立面図を描いたのではなかろうか。何十年もの歴史を経て今、愛され、賑わいに満ちた店先。彼はいい仕事をしたんだなと思う。僕がスケッチをしている間、ひとりとして、ファサードの正面で立ち止った人はいなかったけれど……。

建物名:旧桜井商店
竣工年:1912
建築家または棟梁:不詳
所在地:埼玉県川越市

 

近代建築史への旅・スケッチ展 vol.8
仮想展覧会

次の絵を見る
目次に戻る