AYUMI GALLERY

近代建築スケッチ10タイトル


竣工年:
建築家または棟梁:

所在地:青森県
    弘前市

ひろさき3建築
藤沢 穣

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 今年のスケッチ展は弘前で、しかも重要文化財の青森銀行記念館で開かれるというので、出品作には弘前の建物を作ることにした。弘前には沢山の良い近代建築が残っているが、その中から私は欲張って次の3つを選んだ。
 青森銀行記念館(重文)、旧弘前市立図書館、弘前学院旧宣教師館(重文)
 図面は前以て提供して頂いていたが、6月の初めに取材のため現地を訪れた。以下はその時の雑感。
・青森銀行記念館:明治に活躍した弘前の名匠、堀江佐吉の作品。左右対称、正面屋根窓の3連アーチ、日本瓦で葺いた屋根の巨大な棟、その屋根の端に巡らせた洋式の手摺壁、全ての窓にはめ込んだ美しい鉄格子などが奇妙なバランスを保って小さいながら堂々としたファサードを形作っている。さながら燕尾服を着た明治の元老を想わせる雰囲気がある。
・旧弘前市立図書館:これも堀江佐吉の作品。青森銀行が燕尾服を着た明治の元老とすれば、これは夜会服を纏った元老令夫人といった雰囲気の、まことに華やかなたたずまいを見せている。同形の2つのドームを両端に戴くフランス式の屋根と軒下の処理が美しい。8角形の塔屋部の位置が左右で少しだけずれている。どういう意図なのだろうか。
・弘前学院旧宣教師館:元老および令夫人に対し、こちらはアメリカ外交官令嬢というところか。1階の北側が廊下、2階の北側がサンルームの様になっているのだが、この部分の窓は引戸式になっている。西洋建築では極めて珍しい。玄関も上り框があって、靴を脱ぐようになっている。いずれも、設計したのが日本人の棟梁だったからか。アメリカ婦人は果たして靴を脱いでいたのだろうか。
<堀江佐吉のことについては、鈴木喜一著「明治の西洋館I」に詳しい。>