AYUMI GALLERY

近代建築スケッチ10タイトル

竣工年:1942年
所在地:東京都小金井市
設計:前川國男

前川國男自邸
青山 恭之

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 このスケッチ展の対象は、「風景として生き続けている建築」である。とすれば、この前川國男自邸は、僕らの世代は古ぼけた写真の中でしか知らず、一度死んだ建築ながら最近新たに蘇って、「風景の中に生き始めた建築」と言えるかもしれない。
 1942年の竣工後、1945年に前川事務所が空襲で焼失した後は事務所としても使われていたが、1973年に解体された。ただ、部材が保存されていたため、1996年に「江戸東京たてもの園」に復元されて僕たちの前に立ち現われたのである。
 建築史の知識として、外観の民家的な印象やシンメトリカルなプランを知ってはいたが、実際この空間の中でスケッチを始めてみて、このインテリアを限定している東西の壁と天井の面の、あくまでも白い抽象性に驚いた。あの戦争のさなかにおいて、建築家とは、こういう思考ができるものなのだろうか。半世紀という時間を超えて問いを投げかけてみても、それはこだまのように今日の僕らにまで戻って来るだけである。