近代建築史への旅スケッチ展2002
後期日程・オープニング企画で川越の魅力堪能
トーク・パーティ・まちあるきが盛況

2棟の蔵を会場に

 「近代建築史への旅・第13回目スケッチ展」は、神楽坂展(7月5日〜10日)につづき8月24日(土)から川越での展示がスタートしました。

 会場となったのは川越市内に残る古い蔵2棟。メイン会場の「幸すし北の蔵」は明治と大正にまたがって建てられた店蔵で、今年まで荒れた状態であったものを蔵の会をはじめボランティアで大掃除をし、化粧直しをしたものです。広い土間と「みせ」とよばれる板の間・座敷の空間に約90点の作品が並びました。一方、サテライト会場となった「蔵乃茶屋かくれんぼ」は、近年ジャッキアップして改修した明治時代の端正な蔵の2階。下階は「あとひき煎餅」で知られる塩野煎餅店として営業されている「生きた文化財」でもあります。ここには川越のモチーフを中心に8点が展示されました。

 初日の24日(土)、オープニングイベントがスタート。まず16時から会場内の座敷部分でギャラリートーク「時代を映すまちと建築〜スケッチを通して見る川越」が始まりました。
 演壇の傍に立てられたスクリーンには川越の建築のスライドがエンドレスで映写されるなか、座敷には約40人の市民が着席。


▲メイン会場の土間


▲座敷で行なわれたギャラリートーク



上写真・幸すしの長島威さん

建築は時代を映す鏡

 パネリストの伊郷吉信氏(建築家・伝統技法研究会)は、「20年前に川越を訪ねた時の、喜びに心が踊ったことを思い出す。その後も来るたびに新しい発見があった」と発言。折しも前日に報道された川越織物市場の保存問題に触れ、「建築の保存は難しい行為だが、“共有の財産であるという市民の意識”“建物を正確に評価する姿勢”そして“行政の協力”という三本柱が欠かせない。川越はそのいずれもがうまく動いているまちといえる」と語りました。
 まちづくりを中心的に担っている川越蔵の会の荒牧澄多氏(川越市都市計画課)は、「蔵のまち」だけではない川越の建築の「重層性」を説明。「蔵と洋館、洋風町屋(いわゆる看板建築を含む)まで、それぞれが歴史を映していることを知って欲しい。いつの時代も最先端の技術を取り入れてきた川越商人の心意気がこういうまちを作り上げた。翻って、現代の建築における最先端が何か、ということを真剣に考えたい」と語り、地域の景観を維持する困難さに言及しました。


スケッチで身体の中に記憶させる

 歴史的建造物のオーナーとして発言した塩野すい子氏(塩野煎餅店)は、コンサートなどを通して蔵を文化の発信地にしようという希望を披露。「古い建物を使っていると言うといろいろ不便なことがあるのではと言われるが、逆である。結露もなく、人間にも優しい構造で、昔の人びとの智恵に直接触れることができるのだということを多くの人に知って欲しい」と訴えました。
 スケッチ展よびかけ人の鈴木喜一(建築家・アユミギャラリー主宰)は、「路地の裏の“普段着の川越のエリアでは壊されていく建物も多い。なんとか保存したいと思う一方で、何ができるのかという無力感を感じることもある。しかし建物の前で佇み、描くことによって確実に身体の中に記録されていく、遠い昔に腕を振るった職人の技までもが自分の中に封じ込めていく、そんな作用がスケッチにはあるのではないか」と語り、これからも近代建築スケッチ運動を進めていきたいと結びました。

 会場では前村敏彰さん前村記念博物館主宰)が準備された特製うちわが販売されましたが、30枚はまたたくまに完売の好評でした。

 続いて土間で行なわれたパーティでは、(幸すしオーナー)長島威さんの乾杯の音頭の後、宇都宮積善氏のバンジョーのミニコンサートを楽しみながら夜が更けるまで宴が続けられました。

▲旧遊廓に残る旅館建築


▲成田山別院前の銅板葺きの店



▲まちあるきの様子


▲まちあるき後の記念撮影

観光コースでない川越

 日曜日の25日はまちあるき会。
 10:00に川越駅に集合した約40名は、荒牧さん他の川越蔵の会メンバーの道案内で出発。「蔵造りのルートは今日は行きません。地元でも知られていない穴場を見ましょう」との荒牧さんの言葉通り、川越工業高校から喜多院に続く町屋群や置き屋根の蔵(農家に多い)、住宅街の中に処々に残る軟らかいムクリ屋根の料亭建築などを堪能しました。
 日本聖公会川越キリスト教会では、ミサ終了を待って内部に入り、パイプオルガンの実演とともに見学。荘厳な建築空間を実感しました。

 展覧会は31日(土)まで開催されました。【渡邉義孝記】


  
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