AYUMI
GALLERY
2003

スケッチ展
WEB展覧会

プロバンスの三姉妹「セナンクの修道院」/大河原 保次

所在地/フランス  竣工/1230年  設計者/不明

「プロバンスの三姉妹」の一つセナンクの修道院を訪ねて
 今年6月、菩提寺天光院の文化活動の一環としてパリ・モンパルナスのギャラリーで絵画や書などで日本文化の一端を発表する展覧会に参加するためフランスを訪ねた、その会は仏式の開会セレモニーでスタートしたが今までそのギャラリーの開会に集まった人数を倍以上越え会場から半数近くの溢れ、盛況な開会式でスタートしその後も毎日の多くの人が展覧会を盛り上げてくれた。
 私は会期中アヴイニョンに住むフランスの知人を訪ねパリ・リヨン駅からTGVからの車窓を楽しみ、一泊二日のスケジュールで南仏の太陽と歴史文化を満喫してきた。
 限りなく装飾を排除しその精神性を重視した、南仏山岳地方に多いシトー派の修道院は一世代前の日本の建築家から評価されたが、バブル後の今、若い建築家たちが目を向けはじめているようで、建築デザインの真髄がここにあるからだろう。
 近ごろ建築関係から距離をおくようになった私だが、この機会を逃すと訪れることは難しいとおもい、三姉妹の一つ、セナンクの修道院を訪ねることにした、その修道院は背にした急峻な石灰岩の山を越えなければならない厳しいところにあった、今は車で簡単に山越え出来てしまうが、創建当時(12世紀)のシトー派にとって申し分ない立地条件であったことを実感しながら、ラベンダーの花の色と香りはその楚々とした修道院の姿を一層引き立てていた。
 シトー派の修道院は形態的に単純な幾何学的フォルムを中心に、平面、立面、断面をどこまでもシンプルな形で組み合わせ、その全てを繊細な石積建築で構築し、装飾のない面と僅かに装飾された開口などに特徴を見出すことができるが、他の二姉妹の修道院には柱頭装飾もないのだが、セナンクの修道院はギリシャ建築の柱頭を飾った植物系の飾りがあり、全ての柱頭は異なるデザインで飾られていた。
 バブルに踊った建築から抜け出すために、若い建築家たちが「プロバンスの三姉妹の修道院」に興味をいだく気持ちをとてもよく理解できる。