AYUMI
GALLERY
2003

スケッチ展
WEB展覧会

石巻水道資料館/豊原 みどり

所在地/宮城県石巻市  竣工/1932年  設計者/不明

 石巻の中心の山手に水道坂と呼ばれる長い真っ直ぐな急坂がある。その袂と頂上二箇所に水道施設が有る為、そんな呼称になったのだろう。
 百万年前に女子高校生だった私は、バス時間に合わせた生活というのがどうにも馴染めず、山の上にある学校にひとり自転車通学していた。
 殆どの学友は、バス・電車あるいは徒歩なので別ルートの通称大根坂を登っていたようだ(三年後に大根足になる、との命名らしい)。私は、季節や気分で大根坂かあるいは水道坂を選んでいたように記憶している。水道坂は道路沿いに桜並木があったせいで中も見えなかったし、登る時は、自転車をひいて一杯、一杯で登るし、下りる時はブレーキをかけずにスピードに酔いしれていたし、で水道施設の中にこんな建物がある、とは全く知らないで過ごした。「日本近代建築総覧」や、浅井元義先生の「スケッチ石巻 古い家並み」(きた出版)を見て、この建物の存在を知ったのであった。
 ご覧のとおり、マンサード屋根が特徴で、屋根材は、スレートで葺いてある。スレート日本一の産出地、雄勝町が近くにある為、結構、石巻にはスレート葺きの建物が昔はあったのである。資料館であるが残念ながら、中を見学した事はまだない。本当に公開しているのかどうかも甚だ疑問なのだが・・・。 現在、この建物の後ろに何やら新しい建物を建設中であった。もしかして、取り壊す気なのか?と危惧したが、事務所に引き返して質問するのは止めておいた。
 水道施設は、隠れた名品があるようで、第12回スケッチ展の地方会場だった仙台荒巻配水所旧管理事務所をはじめ、建物もあるいは庭園も美しく管理しているところが多いように思われる。事務所がある給水棟が資料館の反対側にあるが、その建物も昭和7年築のモダンな味のある建物だった。次回は、こちらの建物を描きに来よう。
 水道施設は、日常生活でちょくちょく訪問する場所ではないのだが、スケッチ目的なら事務所に一声かければ、堂々と訪問できるので、ご近所の水道施設を一度訪問する事をお勧めしたい。桜、マーガレットなど季節季節の花が一杯咲いている時など最高ではないかと思う。