神楽坂建築塾修了制作展 論文

「これからの自分のライフワークの方針」

仁科 真弘(東京都)


 

● これからのライフワーク

 「豊かな生活の場を再生するために、その街ならではの地域性・場所性について実践的に行動しながら深く考え、社会に働きかける。」
 ―フットワーク、フィールドワーク、ネットワーク―
 
 いま暮らす「ここ」に対して感じることが困難になりつつある、その街ならではの生活の楽しみ、魅力、独自性。
 地域の自然、街並み、歴史という「母体」の中で育まれてきた生活文化や心の中に伝承される記憶は、その母体の衰退と共に弱まる一方と言える。
 気付いて見れば、地域にわずかに残る伝統文化、歴史に対しても異文化を気楽に楽しむ旅行者のようにしか接することが出来ない自分(日本人)がいる。
 街との一体感の失われた世界を生きているという根無し草感覚。
 これは戦後、もしくは明治以降、ずっと私達日本の社会が自分たちの生活の質を犠牲にしてでも近代化や経済発展を強力に推し進めてきた行為の当然の帰結と言える。
 これからは生活の質を豊かにすることに人々の熱意や経済投資先をシフトして行きたい。
 そのために生活文化の母体としての自然、街並み、建築、歴史(一言で言えば場所性)についてグローバルに考え、ローカルな素材に対して実証的に行動することから解決の糸口を探る。これをこれからのライフワークとしたい。


○テーマ1

 「自分の棲む街を楽しむこと。愛すること。良く知ること。地域の生活を楽しむために生活圏に仲間を作ること。」
 まず、自分の棲む街での生活を豊かにすることからはじめる。生活者としてのしなやかな視点を育む。

○テーマ2

 「世界を深く体感できる感性を養う。」
 多様な価値観。多様な文化・歴史。それらに優劣をつけるのではなく、その多様性の豊かさを尊び、深く理解する感性を磨く。

○ テーマ3

 「場の力を読み解く眼力を養う。」
 机上の論理、計画以上に、足で稼いだ情報、五感を通じた体験を大切にする。現場主義。迷信ではなく自然の摂理としての風水学など、過去からの知恵の伝承と現代への応用を考える。自然の力を押さえ込むのではなく、潜在力を引き出す手法を大切にする。

○テーマ4

 「他者としての役割を考える。」
 地域のひとにとって見なれた、または見落とされている地域の魅力を再発見、再評価する役割。地元どうしでは言い難いことへの切り出し。広い人脈を活かしたネットワークづくり。

○ テーマ5

 「計画というものが先天的に持つ硬直性に配慮する。」
 政治的な問題、制度上の問題を含めて、計画と言うものが先天的にブレーキ不能の硬直性を持つと言うことを認識する。状況は常に変化し、何を関数に入れるかで答えはまるで違ってくる。つねに白紙撤回を含む、計画の柔軟を確保する。多様な解決案の比較検討の上に方針決定する。

○テーマ6

 「世論を巻き込み論議を深めるための仕組みを考える」
 初・中等学校教育への働きかけ。ワークショップ等を通じた地域の人達との対話。開発計画に対する多様な選択肢、複眼的見方の提示。

○ テーマ7

 「スクラップ・アンド・ビルドからリノベーションへ」
 歴史の断絶ではなく、伝承、再生を重視したスタンスを大切にする。


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