神楽坂建築塾 第三期 修了制作

「和あかり」

  建築塾塾生 加藤亜野

 

和あかりをつくる


 そもそものきっかけは”ワーロンシート”という素材を知ったことだった。
 “ワーロンシート”とは和紙を塩ビでラミネートした耐久性に優れた素材で、ランプシェードやインテリアに使用される紙。切断ははさみやカッターで、接着はGボンド・プラスチック用接着材でOKという手軽さがうれしい。もちろん、70℃までの耐熱性も備えている。色は『紅梅』、『桜』、『紅藤』、『利休鼠』など、10数色あり、光をあてるとそれぞれ微妙に雰囲気が違っていて、どの色も美しく、選ぶのに迷ってしまう程である。そのほのかなあかりは”和”の空間を演出し、ひとの気持ちをなごませる要素を持っているようだ。
 紙そのものに演出効果があるから、複雑な細工はいらない。ワクをつくり、ランプをすえつけ、ワーロンシートでくるめば、シンプルな”和あかり”ができる。不器用な私にもできるはずだと取りかかったのはいいが、作りはじめるとなかなかスムーズにはいかなかった。行き当たりばったりな性格上、細かい製作方法・寸法管理など考えもせず、途中で作業がストップすることもしばしばだった。


 まずは4本の柱を各スパン2本のはりで挟み、上下で連結するのだが、2本のはりを支えつつ、麻ひもで柱に結わえるこの作業、1本めが難しい。
 はりは自重で垂れ下がろうとするので、手を止めるとするり、と抜け落ちてしまうのだ。
 今から思えば、自分が結ぼうとしているはりを、他端で、連結した状態のように支えてくれる手かモノがあれば良かったのだろうが、浅慮ゆえに考えが及ばなかった。
 その後もひもの始末をどうするか?とか、格子に組んだ底面の木厚分の段差をどのように解消するか?など細々とした問題にぶつかり、その度にやって(作って)みなければわからないモノだ、などと“自ら手を動かす”ことの楽しさといらだたしさと重要性とを痛感した。


 今回はこんなかたちで、“ワーロンシート”という素材を使って和あかりを自作してみた。
 この素材の魅力は安価で、施工がしやすい点だろう。常時使用する場合の耐久性の不安はあるが、インテリアのライトシェードとして飲食店のテーブルライトや老人ホームのプライベート空間の演出等、多種多様なシーンに使ってみたいものである。

制作工程

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