神楽坂建築塾修了制作「再生のオブジェ」 
片岡純子

神楽坂建築塾生として学び、この成果を修了制作及び論文で発表するということで

今回私は「再生のオブジェ」を制作致しました。

なぜ「オブジェ」かというと、建築の専門的な教育を受けたわけでもなく

また建築に関わる仕事をしているわけでもない、ど素人の私にとって

建築に意識が向かうようになったきっかけが「ものづくり」であるからです。

 

この度機会に恵まれ、アユミギャラリーで私のライフワークである創作活動の個展を

開催することになりました。この中でもこの修了制作を象徴する作品が個展のDMの

写真中央にある照明器具です。

 

ほぞ穴が残る、梁の一部と思われる木材(材質:欅)を利用し、形を変えて加工するのではなく

できるだけそのままの形を残し、いくらか装飾的にのみを入れて表面を磨きました。

建築廃材ですから傷みや割れ目もあります。なるべくこの木材自身の歴史を消さないように

丁寧に時間をかけて磨きます。そして、ちょっとだけ私の気持ちも彫り込ませてもらいます。

スイッチを入れると点灯し、ほぞ穴から光がもれ、そのことで「ほぞ穴」の存在が

際立つように意識しています。

また、光を当てることにより伝統的な技術に対してスポットライトを当てるという、

賞賛と敬意の意も込めています。

ですからいわゆる明かりをとる為の「照明器具」ではなくシンボル的な存在としての

「オブジェ」という方がふさわしいと思います。

このような材料の背景、それに対する作り手の気持ちを凝縮し、象徴化したという意味で

この作品を修了制作としました。

 

家を作ることに比べれば、この作品は大きな家の中を構成する柱の、ほんの小さな一部ですが

この小ささを大事にしてものづくりを、また表現活動をしていきたいと思っています。

 

塾生として学ばせてもらい、思った以上に幅広く奥深い講議、活動内容に大変満足し、

また建築塾運営に関わる皆さん、講師の方々、熱心でいろんな年代や立場の塾生の方達が

集まる中で、いつも気持ちのいい刺激を受けてきました。

ただ正直なところ先にお話している通り建築に関して、ど素人の私にとっては

講議を受けに行くだけで精一杯、とても吸収・消化できるようなレベルではなく

この成果を修了制作に盛り込めたと言えるかは残念ながら自信ありません。

けれども「新しいものをむやみに「つくる」だけではなく歴史的なものを「残す」「活用する」

ことを視野に入れ」た神楽坂建築塾の活動のコンセプトは、私の創作活動の支えとなっている

信念に通じるものがあります。

 

来期以降しばらくは塾生として参加できないかもしれませんが、今後は塾生という立場に関わらず、

一般参加できるスケッチ会等にも参加したりして神楽坂建築塾と少しでも関わりあいながら

気長に建築とそれを取り巻く現代の状況を学び、考え、またそれを自分のライフワークに

生かせるように活動していきたいと思います。

また、この幅広いネットワークを生かし、様々な分野で仕事をしている方々とコラボレーションで

いい仕事が出来るようになれば、と思います。

 

最後に、この講議の期間中アユミギャラリーで個展を開催しています。

もし時間に余裕がありましたら是非お立ち寄り下さい。

作品の他に、私がものづくりをはじめ、建築に目覚めるきっかけとなった創作活動の拠点である

民家をパネルでご紹介しております。

私もこのような古い民家を手に入れ、少しずつ手を加えながら自分のお城(アトリエ)を築くのが

近い将来の大きな夢です。

以上。

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