AYUMI GALLERY

1998.1.16 fri. 〜25 wed.


旅に迷い、旅を歌う

 ―――Street and People――― 

鈴木 喜一 (すずききいち)

<略歴>
1949年 静岡県生まれ。建築家。武蔵野美術大学講師。
実務のかたわらアジア辺境を中心とした独自の旅を続け、プリミティブな人間の風景をじっくり記録している。画集『旅の中の風景』。著書『新・大地の家』、『スケッチで綴る日本近代建築紀行』ほか。CD-ROM写真集『アジア漂流』。

「僕の場合、はっきりした目的地があって動いているわけではなく、旅への衝動が飽和して動くことが多い。つまり漠然と、ふーっと一歩を踏み出しているのである。周囲から、どこに行くのかと問われて、とりあえずバンコクに行ってから、では答えになっていないことはわかっている。
……だが、目的地をはっきり決めてしまったらどうしても身構える。若干の資料も整えるだろうしディフェンシブになる。そのことによって、新しい発見とかスリルがなくなってしまうような気がする。いちばん大事なものに触れられないような気もしてくる。
僕は未知の世界で右往左往する自分、鋭敏になっていく自分、解体していく自分も見たいのだ。その中から、本当の人間の生きている日常風景が見えてくるのではないだろうか。
旅を終えて、結果的に自分では予測もできなかった旅の道筋が描かれていることに気づく。その軌跡をながめながら、遠いところ、身近なところ、旅する方位は360度、無限だなとつくづく思う。人は地球上のあらゆるところに住んでいるのだから。
とにかく行ってみてから……、これが僕の旅の感覚なのである。“旅に迷う”感覚なのである」
と語る建築家があてどない旅に迷いながら、その路上に繰り広げられている人間の生活風景を水彩画と短歌で紹介する。鈴木喜一最新漂流記録、約40点40首。

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