近代建築史への旅第16回スケッチ展 ・ WEB展 ・ スケッチ展とは?(趣旨と歴史) 
「伝統を受け継ぐまち京都」




 DAC京都デザインセンターにスケッチを展示

 近代建築史の旅 第16回スケッチ展は、8月6日(土)に京都市にて京都展がスタートしました。
初日6日(土)に行われたギャラリートークには、真夏日にもかかわらず出品者・京都鴨川建築塾・神楽坂建築塾・写真塾メンバー約40名が各地から集まりました。


DAC京都デザインセンターでの展示風景▲  

 近代建築史への旅 スケッチ展 ギャラリートーク

 14時からは会場でもあるDAC京都デザインセンターで「ギャラリートーク」を開催しました。
【パネリスト】
楢村徹氏:建築家(倉敷建築工房 楢村徹設計室)
大角雄三氏:建築家(倉敷建築工房 大角雄三設計室)
神家昭雄氏:建築家(神家昭雄 建築研究室)
森本均氏:呼びかけ人(DAC京都デザインセンター代表)
鈴木喜一:呼びかけ人(鈴木喜一建築計画工房代表・アユミギャラリー主宰)

 

講師陣▲

オープニング挨拶

 まず、京都の呼びかけ人の森本均氏が「京都の伝統的な技術や建物を次の世代に伝えていきたい、というのが僕のいつも持っているテーマです。しかし、会社の経営をしていると、新築と同時に建物保存を進めていくのはなかなか大変です。そんなときに、神楽坂建築塾でプロの方々がつくるだけでなく残すことを真剣に考えている姿を見て、京都でもこれをやりたい、と思いました。そして、昨年京都鴨川建築塾を開塾して、鈴木喜一先生に講師としてお越しいただいたことから、今回の京都スケッチ展につながりました」と挨拶しました。

 

近代建築を次の時代へつなげる

 続いて東京の呼びかけ人の鈴木喜一が「まず、近代建築とは何か。現代建築と勘違いされる方が多いが、僕の考えでは、明治の幕開けから昭和30年代(1955年)までが近代建築、昭和40年(1965年)以降は現代建築です。ざっくり分けてますが、どんな建物でも50年経てばそれなりに歴史を持っていると感じます。僕の住んでいる神楽坂も戦争で焼け野原になって、1945年〜1960年に建った建物がいまでも残って趣のある町並をつくっています。それらの建物をさまざまな人が丹念にスケッチすることによって、その建物の持っている歴史が厚みを増す、そんなことを自然とくり返していくことで、近代建築は次の時代へつながっていくのではないかと予感しています」と発言しました。

 

建築家それぞれのスケッチスタイル

 次に楢村徹氏が「御存知の方もいると思いますが、僕たちは6人で古民家再生工房を立ち上げていて、古いものを伝えて次の世代につなげていくことを共通のテーマに、それぞれ独自のスタイルを持ってやっています。古民家再生工房立ち上げのきっかけは、イタリアの美しい石造りの町で、今も建物を直して使っている姿を見て、日本でもこれをやりたいと思ったこと。それは、町並保存、スクラップアンドビルド、資源問題、など大袈裟なことではなくて、建物に愛着をもつことが、肩ひじはらずに当たり前になるということ。手づくり、人の匂い、時代からちょっと取り残されたもの、そんなものに少しでも感動してほしい。そのための1つの方法としてスケッチがあると思います。誰もができる小さなことを積み重ねて建築の裾野をひろげていこう」と語り、
 神家昭雄氏が「昔は旅に出ると建物の写真をたくさん撮ることで安心感を得て、家に帰って現像しても目を通さない、ということをくり返していました。しかし、スケッチをすると、写真と違って家に帰ってから何回も見るんですよ。体に風景が染み込んでいるから、描いたときの記憶がよみがえってきます。だから、スケッチをすると豊かな気分になれるんです」
 さらに大角雄三氏が「スケッチは楽しい時間をつくってくれます。旅先で、電車に乗り遅れて3、4時間待たねばならないときでも、鉛筆一本さえあれば、いくらでも描いていられます。僕は建物を描くよりも人を描くのが好きなんだけど、スケッチをすることで建物と人との関係について新たな視点を見つけられるのがとても楽しい」と話しました。

 

建物を一生懸命つくる人と話がしたい

 続いて森本均氏が「22歳で会社の代表にならねばならなかった頃、会社とは異なった、建物について考えるための組織をもちたいと考えていました。しかし、会社の経営に奔走する日々、自分勝手な図面を引く多くの設計事務所とつき合ううちに、その想いはいつしか消えていきました。もっと生産性や技術などを図面に反映させて建物をつくるべきだと感じていた頃に、建築家・吉田桂二氏と出会いました。自分の思いも寄らないところまで建物のことを考えているその姿を見て、自分ももう一度原点に戻って、建物を一生懸命つくる人たちと話がしたいと思い、鴨川建築塾を開塾しました。みなさんと話す機会を増やしてこれからも頑張っていきたい」と感想を述べました。
 最後に楢村徹氏が「スケッチをすることによって、人との輪が広がっていく、町並を深く見ていく、建物に愛着を持っていく、ことが大事です。スケッチを持続していくことは、自分の町に誇りと愛着を持ち、豊かに暮らしていくことにつながります」と話し、ギャラリートークを締めくくりました。

 

京都スケッチ展の各賞は、以下の通りです。

 

森本均氏▲

 

鈴木喜一(左)と楢村徹氏(右)▲

 

満席のギャラリートーク会場▲

京都スケッチ展各賞発表▲

人気投票を基に発表された各賞
DAC大賞
楢村徹賞
大角雄三賞
神家昭雄賞
中根優子「九段下ビル」
酒井絵美「石の街の赤煉瓦建築」
宮原一美「ダイビル」
岸成行「九段会館」



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