近代建築史の旅 第14回スケッチ展・後期日程
「歩き・描き・語り」諏訪を堪能

近代建築+温泉一泊ツアーに39人が参加

近代建築史への旅第14回スケッチ展 ・ WEB展 ・ スケッチ展とは?(趣旨と歴史) ・ 東京展の報告 

酒屋店蔵にスケッチを展示

 近代建築史の旅・第14回スケッチ展は、8月23日()、長野県諏訪市にて諏訪展がスタートしました。
 アユミギャラリーが呼びかけた「一泊ツアー」には、関東地方をはじめ、宮城、新潟、愛知、三重、岡山などから39人が参加(うちスケッチ展出品者は18名)し、後期日程・諏訪展のスタートに合流しました。

 初日の23日()正午、汗ばむような日差しの中、上諏訪駅にはツアー参加者が続々と参集。
 スケッチ展出品者だけでなく、神楽坂建築塾・美術塾メンバーや、インターネット「近代建築探訪メーリングリスト」を通じて知ったという新しいメンバーの顔も見られます。
 一行はすぐに、諏訪を代表する近代建築・片倉館(1928年築)に移動し昼食。その後、看板建築や店蔵が多く残る国道20号線に沿って、展覧会場・舞姫酒造および三村貴金属店を訪ねました。

 重厚な蔵作りの舞姫酒造は諏訪を代表する造り酒屋で、ここの2階座敷を中心に諏訪の大工さん有志がコンパネで大型キャンバスを仮設し、約60点の作品を展示してあります。朝から諏訪入りしたメンバーは、早速道路を挟んでスケッチを始めていました。


▲メイン会場の舞姫酒造

▲舞姫酒造2階の会場



▲トーク会場の片倉館

 


▲トーク会場の片倉館大広間


▲パネリストの方々。左から伊藤氏、宮本氏、鈴木。


▲左から太田氏、村松氏。

諏訪の建築 保存と活用を議論

 15時からは再び片倉館に会場を移して、「スケッチ展記念トーク」を開催(司会は伊藤信治氏)。当日朝の『長野日報』に大きく紹介されたこともあり、同館大広間には約60名が集まりました。

 冒頭、司会の伊藤信治氏が、ツアーメンバーが描いたスケッチを披露しました。
 まず長野県建築士会諏訪支部青年委員会から、諏訪の魅力を再発見した最近の取り組みが「SUWAらしい宝探し」と題してプロジェクターを使って紹介され、特に片倉館ライトアップ作戦を通して地元市民が歴史的建造物を再評価し愛着を感じるようになった経緯が報告されました。

 呼びかけ人として発言した鈴木喜一(アユミギャラリー主宰)は、「片倉館を使わせていただけるとは思わなかった。ここと舞姫と三村貴金属店、この三つの点を結んだ中にある有名無名の近代建築、更に路地やディテールのさりげない魅力に溢れたこの諏訪のまちの保存活用は、建築関係者だけでなく市民全体の課題である」と訴えました。

 全国の近代建築を「採集」しつづけている写真家の宮本和義氏が、「せっかくのいい建物たちが、後補のアーケードや電柱によって見苦しくなっている。これらを取り除いて、建物に再び舞台に出て欲しい。またどんどん壊してはつくっている建築家たちに、もっと見識を持て、といいたい」と発言。それに対してサテライト会場の三村貴金属店社長が「電柱とアーケード撤去は商店街でも議題に登っている」と応えました。

 一方、地元からは建築士会の太田清人氏が、コンクリート護岸をつくっては再び壊すような土木行政への偏りを批判した上で、「必要なのは専門的な知識だけでなく、その地に根差したものを大切にしようという市民一人ひとりの感性や気持ちである」として、諏訪市民の意識を高める事業の必要性を訴えました。また同じく地元の建築家・村松健敏氏も、「素晴らしい建物が次々壊されていくのを傍観していた責任は、われわれ建築専門家にもあった。建築士会としても、今後一層、諏訪の貴重な財産を大切にする運動を勧めていきたい」と発言しました。更に会場からの発言も交えながら、「山上(やまうえ)」にも残る遺産の再評価や、実際に歴史的建造物を保存・活用するための方策をめぐっての議論も行われました。

 舞姫酒造から大量の清酒も差し入れられ、 17時からはオープニングパーティがスタート。諏訪市民と来訪者が和やかに歓談しました。全員が自己紹介とともに発言し、その中で美術塾講師の仲澄江さんは「舞姫酒造で、古い建物を傷つけず見事にパネルを作って展示してあるのを見て、諏訪の皆さんはなんて心の優しい人たちなのか、と感激した。建築士会はじめ皆さんの心配りによって、私たちは諏訪を満喫できました」と語り、大きな拍手を受けました。

 パーティの後は片倉館の温泉「千人風呂」を堪能。日本一の泉料を誇る上諏訪温泉で、旅の疲れを癒しました。


まちあるきで諏訪の魅力を満喫

 ツアー一行は湖畔の「すわ湖苑」で宿泊し、二日目のまちあるき+スケッチ会に参加。朝9時の上諏訪駅には、新聞で知った市民ら約30名が集合しました。

 この日も長野県建築士会諏訪支部から、伊藤信治氏・両角修次氏・笠原嘉久氏が道案内として参加しメンバーを先導。国道20号線に面した店蔵や看板建築だけでなく、路地をくまなく歩きながら「隠れた名建築」をいくつも紹介します。
 城下町とともに宿場町として近世から栄えた諏訪は、近代には製糸業の発展にともなって官民あわせてさまざまな近代建築が建ち並びました。銀行・店舗・酒造業・洋装品店、更に信州特有の深い軒の蔵などが駅周辺に点在しています。中には鉄平石をスライスした天然石で屋根を葺いた住宅もあり、風土性豊かな民家も見られます。まちあるきには地元のテレビ局が密着取材し、近日中に放映される予定です。
 約一時間のまちあるきの後、いったん解散して自由スケッチがスタート。12時半に再び三村貴金属店に集合して、鈴木喜一による講評会が開かれました。
 暑い中でスケッチをしたメンバーは流れる汗を拭いながら、「諏訪のまちなみの魅力を実感した」「A級のものだけでなく、B〜C級の面白い建物が素敵だった」などと感想を語り、お互いに絵を見せあいながら、交歓。13時過ぎに解散してツアー日程を無事終了しました。

 参加いただいた皆さん、諏訪でお世話になった皆さん、どうもありがとうございました。【Y】

 

夜の片倉館(有地訓氏撮影)


▲まちあるきの様子

▲道端でのスケッチ

▲長野日報8/23付

参加者の感想文とスケッチ作品へ



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