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 佐野陽一
SANO Yoichi 
▲「flow」series(5作品)
▲「incidence」series(6作品)
▲「transparency」series(2作品)
▲「reservoir」series(3作品)
▲「seascape」series(2作品)


世界を知覚する手がかりとしての写真


 私は、これまで形式から還元されるような手法によって作品を制作することを考え、試みてきました。近年展開しているピンホール・カメラを用いた一連のシリーズも、レンズという物質の介在しない被写体(=対象)とフィルム(=記録媒体)との1対1の関係、撮影対象とのより直接的な関係性という観点から導き出されたものであると同時に、原初的なメカニズムに立ち返ることによって「写真」そのものが持つ固有の問題や要素を明確にすることが出来うると考えたからでした。
 その一見素朴なピンホール・カメラの方法論は、ただ単にノスタルジックなイメージを紡ぎ出すことだけではなく、高速度のシャッタースピードによって、いとも容易く計測可能な単位に分割されたかのような事象をふたたび計測不可能な姿へと引き戻し、その結果、様々な可能性が繰り広げられる本来のあるべき姿である渾沌とした豊かさの中へ、イメージを解き放つことを自身の純粋さでもって可能とします。
 例えば、撮影という行為に絶えずともなう時間の分断と、写真を見ることによって導かれる時間の生成ともいうべき濃密な視覚体験や、cameraの語源から明かされる原理としてのイメージと空間との不可分な関係性。あるいは、自らの内部を除くものすべてを捉えうる可能性を孕んだ極小の建築としてのBlack Box。そして、もっとも根源的であるところの光の存在について。
 そういった、さまざまな問題のひとつひとつを被写体(=世界)に投影することから制作の契機を導き出し、写真を世界と私とを相互に透過させる皮膜のような存在として意識することと同時に、世界を知覚する手がかりとして写真というメディアを用いることがいかに可能なのかを、私はいつも考えています。

    Profile
    美術家。東京芸術大学先端芸術表現科非常勤講師。写真・インスタレーション専攻。 東京都生まれ。東京造形大学デザイン学科卒業。同大学研究生修了。1998年およ び2001年、アユミギャラリーにて個展「透明な写真transparency」
    transparency-light,quantity。2002年、Space Kobo&Tomoにて 「transparency-flow」。「VOCA展2004−新しい平面の作家たち−」(上野の森美術 館)に出展

 
  1998   2001
アユミギャラリー過去の作品