近代建築史への旅 第14回スケッチ展 開幕

注目集め東京展オープン

 「歴史的建造物を愛情を込めて描くことで、保存のメッセージを伝えよう」と、1993年から始まった近代建築史への旅スケッチ展。14回目となる今年は、東京―諏訪を結んでの開催となりました。東京・神楽坂では、例年以上の来場者を迎えて前期日程がスタート。歴史的建造物への意識の高さを反映しています。全作品がインターネット上で閲覧できるウェブ展もオープンしました。


オープニングパーティで交流の輪

 前期日程の神楽坂展は、7月25日から30日までアユミギャラリーで開催されました。
 26日(土)のオープニングパーティには出品者をはじめ35名が参加【右下写真】。呼びかけ人の鈴木喜一が「歴史ある地方都市には近代建築がまだまだ残ってるが維持していくのは大変。また地元の人がその価値に気づいていないことも多い。諏訪でも、私たちが訪ねて絵を描き、応援することで活気を取り戻し欲しい。スケッチは一人だけで描くのではなく、建物はもちろん、その場にいる人、風や雨などさまざまな力が合わさってできあがるもの。絵から生まれる出会いを大切にして、これからもスケッチ展を続けていきたい」と挨拶しました。

▲作品を手に自己紹介する出品者。それぞれに建物への熱い思いを語りました。

 「今紹介しなければ消えてしまう」

 つづいて今回、諏訪側の実行委員長をつとめる伊藤信治さんが「実は私は建設会社として、長野で“壊してはつくる”仕事を続けてきた。しかし神楽坂建築塾と出会って話を聞いていくうちに、これではだめだ、と気づいた。諏訪に残る古い建物たちは、今紹介しなければ二度と目にすることはできなくなる。ぜひ8月には皆さんに来ていただき地元へのエールを送っていただきたい」と訴えました。
 乾杯の後、全員が自己紹介。出品者からは「無名の建物を見いだし訪ねたい気持ちを起こさせる絵に感動した」、「ものに心あり、というが建物にこそ心ありだと思う。私たちの何倍も生きてきた近代建築を大切にしたい」、「身近な建物というテーマを決めて今後も出品を続けたい」などの発言がありました。 一方、建築学会で近代建築データベース作りを進めている前村敏彰さんからは、「宮城の地震で貴重な近代建築がダメージを受けている。われわれがもっと関心を持ってできることを考えたい。今年もスケッチうちわを作って諏訪で販売しよう」との提案がありました。
 そして会場のあちこちで、出品者や参加者同士がスケッチを巡って交流を深める姿が見られました。

感想ノートに「行きたくなった」の声

 展覧会は7月30日(水)まで行われ、会場にはたくさんの市民が来場しました。
 会場におかれた感想ノートには、「何故か懐かしいような気持ちになりました」「描いた貴女が過ごした時間の濃さがスケッチからじんわりと伝わってきて、私も行ってみたくなりました。ありがとう」「今年は出品しなかったけれど見に来ました。確実に輪が広がって繋がっている、と嬉しくなりました」などたくさんの書き込みがありました。

 来場できなかった地方からの出品者も、ウェブ展を見てくださっているようです。
 岡山からは「やっぱり遠方にいると、ウエブ展は、一つ一つ、食い入るように見てしまいます。あっ、この人が! へえ、こんな建物あるだ〜〜。とぶつぶつといいながら。今夜のオープニングに行けないことは残念でしたが、その分楽しませてもらっています。皆、力作揃いですね」とのメールが届きました。
 リアル展、ウェブ展とも、ご来場いただいたみなさん、ありがとうございました。更に
後期日程・諏訪展および諏訪一泊ツアーへもどうぞよろしくお願いいたします。
【8月8日頃、第2版のハガキが完成します。ご希望の方はお送りしますのでお知らせ下さい】

 

人気投票を基に発表された各賞
アユミ大賞
鈴木喜一賞
武蔵美通信賞
時森幹郎賞
南 雄三賞
南 雄三賞
青山恭之賞
残したい風景賞
なかのさちこ「消防団屯所」
吉田茂承「白壁の酒蔵」
鈴木隆司「パチンコニュースター」
尾上裕隆「法務省」
土肥正文「鎌倉文学館」
渡部容子「旧古河庭園」
伊藤信治「料理屋魚安」
笹沼健一「旧正田邸」

 
第14回スケッチ展  スケッチ展TOPへ   アユミギャラリーTOPへ