友人の奥さんから電話があった。
「もしもしSです。良かったわ、東京にいたのね。あのう、杉並に住宅を建てたいという仲間がいて、ハウスメーカーに頼んでいろいろプランニングしているんだけれど、どうも土地が狭すぎるせいなのか、他に原因があるのか、うまくいかなくて困っているの。無理して土地を買ったのはいいんだけれど、そこに建つ家は夢も希望もないっていうわけ。そういう狭小敷地の設計っていうのは、いろいろ制約があって、たぶん喜一さんは苦手みたいにわたしは思うんだけど、できるう? とにかく建築家なんでしょうおー?」
(旅行ばかりしていてあなた本当に建築家なのう?)的声色をすばやく察知したぼくは、
「ええ、そうですよ。とにかく建築家ですよ。たいした建築家じゃありませんけどね」と言い訳するようにいう。「それで、いったいどのくらいの坪数なんですか」
「20坪ぐらいと言ってたわ。夫婦二人と小さな子供が二人で住むの……」
「……そうですか、とにかくその施主と会ってみましょうか」
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