鈴木喜一建築計画工房
[増改築] File no.18

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国立の家

■所在地/東京都国分寺市
■種別/増改築
■構造・規模/木造2階
■設計/鈴木喜一
■施工/大勝工業
■1985年竣工

photo/ アトリエR


▲中庭からみる

[Photo]竣工写真

▲食堂

▲居間

▲玄関

▲印刷場

▲屋根裏に続く階段

▲新たに増築された右側部分

▲寝室

▲祖父母のための居間

▲既存の居間から増築部分をみる


 国分寺市内藤に施主が約10坪の小さな住まいを建ててから30年程になる。
 その間に数えた増改築は今回で六回目であるという。 家が簡単に壊され、新しく建て変えられていく時代の中で、人間が生育していくように、家もその時々の生活状況に合わせて、うまく変化しながら少しずつ良くなっていくということは、大切なことではないだろうか。現状を実測しながら思ったことは、よくがんばってきたな、ということだった。ここに住む人も家も。様々な思い出がこの家には刻まれている。
 今回の計画は、この家の新しい生活の要求に応じて、思い切って空間を組み変えながらも、今までの家が自然に増殖してふくらんでいくように考えていった。特に、台所、食堂、茶の間が混然とした状態で生活密度が高かったので、斜壁を設け、台所と食堂と収納部分を不可分に整理していった。なおかつ、食堂と居間とつなげるために三角形の張り出し部分を増築して、空間的にゆったりとした連続感をもたせた。
 斜壁の角度は地球の傾きと同じ23.5度。発明好きの学者であったおじいちゃんは喜んで、地軸の傾きが季節を作っているのだと孫に丁寧に説明していた。この斜壁の裏には、施主夫婦が結婚した時に購入した記念の食器棚が組み込まれている。家を建てることは、思い出と夢を建てることだと思った。
 二階には書庫兼書斎を増築した。ここは奥さんの機織りのアトリエにもなる。屋根裏を通って屋根の上に木のベランダを作った。屋根の上から望遠鏡で星を見るのは、息子さんの夢だった。
 一階の土間と中二階には印刷室と活字室を作った。酒井九ポ堂という素人活版所の作業場である。
ここは大学教授を退いたおじいちゃんの目下の仕事場(遊び場)である。
 その他、住まいにおいて、細々と現れてきた生活上の問題点を一つ一つ点検し、整備、改善していった。できあがった家の姿には、増改築を重ねていくことによって作られた変化と風格がでてきたように思える。【鈴木喜一】

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