僕のとなりの国にいるちがう顔の人たち


VOL.4

土の家の集落

フフホト郊外/内モンゴル自治区・中国  Sketch by Kiichi Suzuki

フフホト郊外/内モンゴル自治区・中国

 


前回の話の続きをしよう。シラムレ村のパオを出発した中国スケッチツアーのバスは、気分よく草原をひた走りフフホトに向かう。話の腰を折るが、シラムレとは希拉 仁と書く。村の入口の素朴な木の看板にそう書いてあるのを見つけた。ついでにフフホトはといえば呼和浩特。
バスの車窓からは、思わず降りてしまいたくなるような魅力的な土の集落が見えてくる。ちょっと興奮気味となってきた。まさに大地の家だ!
ため息をつきながら、通り過ぎていく村々を見送る……、というわけにもいかない熱しやすいタチである。トイレだ!と大声で叫んで、とにかくバスを強引に停めてしまう。この時は、まだ団長だったのでかく威厳もあったのだ。
一度バスから降りてしまったら、こっちのペース。かみしめるように静かな村をゆっくりと散歩する。スケッチをするといっても、すぐにスケッチというわけにはいかない。まず、この素朴な村を全身で味わってしまうことが先決である。土が盛り上がって出来たような塀、高さは1.3〜1.5メートルといったところか。この土塀越しにのぞくと、単純な片流れの土の家屋、庭にはネギ畑、ヒマワリ畑、にわとりや犬もいる。土の道には、村人ではなく羊、牛、馬、黒豚がそろそろと歩いている。門扉のアイアンワーク、これがまたプリミティブで面白い。ぼくの好きなパウル・クレーが、これを見たら真っ青だろうな。
結局、一時間あまりウロウロと楽しんでしまった。バスに戻ると村の子供たちがいっぱい集まってわいわいやっていた。羊飼いの男のやさしい眼差しも忘れることができない。
ところでCITS(CHINA INTERNATIONAL TRAVER SERVICE 中国国際旅行社)というのをご存知だろうか。ツアーで行くと、この人たちに面倒をみてもらうことになるのだが、結構、制約がある。こんな勝手な行動は許されないのだ。それをやってしまったのだから、ガイドのマンドラ女史は、不機嫌きわまりない。添乗員が中に入ってたいへんである。旅行中は、この繰り返しであった。
でも、旅というのは、勇気をもってスケジュールを壊してしまうことも大切だ。ひょっとしたら人生もそうかもしれない。責任というのがついてまわるが、それはしっかり、程々に、というところかな。

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