僕のとなりの国にいるちがう顔の人たち


VOL.34

職人の生きている町

カシュガル・中国ウィグル自治区  Sketch by Kiichi Suzuki

カシュガル・中国ウィグル自治区


カシュガルを歩いていて何を見たかというと、10才前後の元気な子供たちなのである。学校に行っているのか行っていないのかよくわからないのだが、とにかくしっかり働いている。
例えば、靴をつくっていたり、材木の皮を剥いでいたり、床屋をしていたり、裁縫をしていたり、アイスクリームをつくっていたり、いろんなものを運んでいたり、うどんをつくっていたり、みんな一生懸命仕事をしている。手を使い、足を使い、頭を使い、体全体を使いながら生き生きとやっていて、その目が輝いている。そういった生きた人間の風景が、家の中だけではなくて、路上に迫り出してきている。
家具屋の場合なら、家の中に木工機械はあるが、職人さんたちは外に座り込んで楽しげに手仕事をしている。見習いの子供がそばにいる。道具は非常にプリミティブで面白いものを使っているので、路上を歩いているとついわくわくしてしまう。立ち止まって見ていると、その製造工程がよく理解できて、ものをつくるということが細分化されていないことに気づく。一つの箱をつくるのも一貫した流れの中で仕事が進んでいる。つまり、トータリティーを感じる。つくる人がものに心を通わせている。カシュガルの子供たちは、そんな中で元気に育っているようだ。
たぶん、彼らは学校に行かなくても、正しくものをつくるという仕事を通じて様々なことを学びながら、立派な精神と肉体をもった大人になっていくにちがいない。
この町にはまだ中世の職人の世界が生きているのだな、と思いながら歩き続けていたわけであるが、ふりかえって、日進月歩のぼくたちの超スピード進歩製造システムのことも考えていた。それは、果たして世の中ここまで加速する必要があったんだろうか、ひょっとしたらカシュガルの町のままでよかったんじゃないかという、現代社会ではイケナイとされる疑惑である。  

目次に戻る 次のページヘ