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ヴォーリズと商人のまち・近江八幡の旅 |
第11回「近代建築史への旅スケッチ展」が滋賀県近江八幡市・旧八幡郵便局で開催されることにあわせて企画された「近江八幡一泊スケッチツアー」は、26〜27日の二日間、東京・静岡・名古屋・大阪・岡山など14都府県からのべ83人が参加し、盛況のうちに終了しました。 8月26日 展覧会初日の26日(土)。 近代建築史への旅スケッチ展の全作品は、現在もWEB展でご覧いただけます。こちらをクリックしてください。
ヴォーリズの精神を現代に 3時からは、展示会場隣の蔵を改装したオープンスペース「酒游舘」でギャラリートーク「ヴォーリズ建築と近江八幡」が、約95名の参加で始まりました。 登壇したパネリストは6名。 旧八幡郵便局(1921年・ヴォーリズ設計)の再生を続けるNPO法人「一粒の会」会長の太田吉雄氏は、廃屋状態であった郵便局を「まず掃除をさせてくれ」と所有者にかけあったところから再生運動がはじまった経緯を紹介。 八幡堀を守る会の西村恵美子氏(酒游舘オーナー)は、「埋立てた時から後悔が始まる」との合言葉ではじまった堀の再生運動の30年を振り返り、「あんな汚い堀なんか……」と言われながらも、急がず焦らずゆるやかな活動を続け、住民のネットワークを広げてきたことを報告。「これからは水質浄化が課題。私が生きているうちにきっと清流を取り戻したい」と熱く語りました。 近代建築収集家としても知られる宮本和義氏(写真家)は、「全国3000件ほどの近代建築を見てきた。その中で、洋と和が交じり合って景観を作り上げている面では近江八幡に並ぶところはない。実は昨日まで郡上八幡にいたのだが、郡上には清流があり、一方近江八幡にはヴォーリズがある。まちというものはやはり最後は“人”で決まる。その意味でも近江八幡はとても魅力的なまちだ」と感想を語りました。そして「新しい変な郵便局が増えているが、隣の旧郵便局の方がはるかに素晴らしい。どうしてここを郵便局として使わないのか」と訴えました。 スケッチ展呼びかけ人の鈴木喜一(アユミギャラリー主宰)は「古い建物をスケッチする」ことを訴えました。「描くという行為が、建物と自分との距離を近くする。まちの人に声を掛けられれば更に一歩そのまちに近づいたことになる。後から絵を見れば、その時のことを明瞭に思い出すことができる。そんな建物との対話を、50人、100人が全国で続けていけばきっと大きな力になるだろう」と語りました。 司会の寺田弘氏(神楽坂地区まちづくりの会会員)は、「『人の心はまちの形に似るものだ』という言葉を阪神大震災後の急ごしらえの復興の中で聞いた。たしかにまちがわれわれを育て、またわれわれがまちをつくりあげるのではないか」と語り、更に会場からの意見や、運動を進めていく上での課題などについても議論が交わされ、最後に西村さんが「本物に触れた時に人はホッとするのでしょう。大変さはありますが、時を超えて訴えてくる価値を引き継いでいきたい」と結びました。 ツアーメンバーはその後商店街の夏祭りで屋台を巡り、「登録文化財に宿泊できる」ことで有名な近江八幡ユースホステルに移動し、夜が更けるまで懇親会で地元メンバーとの交流を深めました。 この日のまちあるき及びギャラリートーク参加者の感想文はこちらです。 なお26日は朝から、地元実行委員会による「ヴォーリズ建築スケッチツアー」が独自に開催され、子ども連れなど30名が集まり、ヴォーリズと身近なまちの再発見をしながら絵筆を走らせていました。こちらは27日付の新聞各紙に大きく報じられ、記事を見て旧郵便局に来場する市民の姿もありました。
8月27日 27日(日)はユースを出発後、自由に気に入った場所でスケッチを開始。ユースやヴォーリズ記念病院、一柳記念館、八幡堀そして旧八幡郵便局など随所でスケッチブックを開きました。 最後に一粒の会の太田会長が「遠くからこんなにたくさんの人に来ていただいて驚いている。みなさんのこういう情熱はいったいどこからくるのだろうと不思議でならなかった。でもいま話を聞いていて、みなさんだれもがスケッチを通して、人との出会いを楽しんでいるということがよくわかりました。駅まで見送りに行けず申し訳ありませんが、どうかまた近江八幡を訪ねて下さい」と挨拶し、二日間のツアーは無事に終了しました。
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まちあるきで建物に触れる
午後1時に二手に別れてまちあるきに出発。
汚濁と異臭から埋立て事業が決定したにもかかわらず市民の真剣な呼びかけによって浚渫が実現、見事によみがえった「八幡堀」の水辺からスタート。猛暑の中、NPO法人「一粒の会」メンバーやボランティアガイドの丁寧な説明を聞きながら散策しました。近江商人の故郷としての歴史あるまちなみ(伝統的建造物群保存地区)も見学し、ヴォーリズの建築の前では、そこに住む人間を第一に考えたヴォーリズの設計思想と人となりをも実感しました。
ヴォーリズ研究の第一人者・山形政昭氏(大阪芸大教授)は、ヴォーリズと賀川豊彦との出会いのエピソードを紹介しながら、「最小限度の建築で永続的な満足を」をモットーに、豪華で立派な建物よりも永く人に愛される建築をつくり続けたヴォーリズの人柄を紹介し、「建築は時代を超えてメッセージを伝え、場をかたちづくるもの。他の芸術にはない力を持っている」と強調しました。


たまっていたゴミが出され、風が通ると、自分たち自身の気持ちも癒されていった経験をいきいきと語りました。
「道端で倒れている人がいたら手を差し伸べるのがヴォーリズの精神。この郵便局を現代に活かすことも同じ課題なのでしないか」と述べました。

スケッチは建物との対話

炎天下でのスケッチを終えた参加者は、「描いていたら前の家の人が道路に扇風機を出してくれた」(埼玉から)、「地元の人がみんな話しかけてくれる。楽しいスケッチだった」(岡山から)、「歩いていたら引き留められて蔵の中を描いてくれ、とおばあさんにいわれてスケッチした。とても喜んでくれた」(東京から)、「教会を描いていたら、日曜礼拝を終えて出てきた人たちに『きれいに描いてくれてありがとう』と言われて心苦しかった」(東京から)、「いつもは写真で近代建築を撮って巡っていたが今回はスケッチしてみたら、写真とは違った感慨をもって建物に向き合えた」(静岡から)などと、口々に感想を語りました。また、絵を描くかわりに、「たおやかな近江のひびき風にのせ水面たゆとう八幡の堀」(片桐芳枝)と短歌で思いを綴った人もいました。
スケッチで市民と交流
午後一時に再び旧郵便局に集合して講評会が開かれました。

ツアー・展覧会でお世話になった、一粒の会をはじめ近江八幡の皆さま、ご協力ありがとうございました。なお、「近代建築史への旅スケッチ展」は、旧八幡郵便局にて9月2日(土)まで毎日開催しています。お近くの方はぜひお立ちより下さい。会場は、近江八幡駅北口六番バス停より長命寺ゆきバスで7分、大杉町下車です。

ご意見・ご質問は ayumi-gallery@mba.nifty.ne.jp まで。