近代建築史への旅・スケッチ展

「近代建築史への旅」スケッチ展は、「明治以降現代までの身近な建物や町並み、有名無名を問わず風景として生き続けている建築を、愛情を込めて描いてみよう」という呼びかけに応えた全国各地の有志による合同展覧会であり、1993年春の第1回展から既に7回を数えています。
参加者は当初、呼びかけ人の鈴木喜一が担当している武蔵野美術大学通信教育部「建築史」課目受講生が中心でしたが、回を重ねるうちに建築家、写真家、画家とその輪が広がっております。
建築は人間の生活や社会的活動を包む「器」であると同時に、その地域の多義的な記憶装置でもあります。高度成長期以降、特にバブル景気を経て急速に姿を消しつつある貴重な近代建築たちと向き合い、対話し、描くなかで、一人ひとりが物語を織りなすように作り上げたスケッチたちをご覧いただくことを通して、皆さんの身近な建築たちを改めて見直すきっかけとしていただけたら幸いです。

第4回展より、会場を東京のアユミギャラリーだけでなく各地のギャラリーを巡回する方式としたことも好評でした。横浜(94年11月)、東京−高知(95年5月)、東京−岡山(96年1月)、東京-札幌(96年6月)と続け、当地の新聞やテレビで紹介されて「改めて自分の街の建築や町並みに目をむけてみたい」という反応を来場者から得たことは、主催者として大変嬉しいことでした。そして特に明治以降の近代建築が豊富に残る北海道・札幌でのスケッチ展開催は、私どもとしても是非とも実現したい念願でもあります。
また、昨秋10月日経BP出版センターより、鈴木喜一・宮本和義編『スケッチで綴る日本近代建築紀行』が刊行されました。これは過去5回のスケッチ展を通して生まれた建築や人々との出会いを、かつての出品作約100点の挿画とともに綴り、建築散歩実践のための入門書として出版したものです。

これまでに横浜・高知・岡山・札幌で地元の人々とともにスケッチ展を開催してきました。
現在、いろいろな理由によって歴史的建築の多くが姿を消しつつあります。往時の人々のドラマを刻 み込んだ古い建築の保存を、ただ感傷というにとどまらず、現代の創造的営為として考えてみること も大切ではないかと思っています。



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