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『かんかん森』『松陰コモンズ』より 望月祐志(YM)×鈴木喜一(KS) |
YM● ご無沙汰していました。ちょっと仕事が年度末で忙しかったものでして……2月の『人間漂流』の初日には伺ったんですが、あいにく横浜の方へ出張されていたと奥様には伺いましたが、ついに新型Mac(iBook)を購入されたとか。(笑)『人間漂流』の展示の方は、“笑み”が主題ということで、ヒューマンな作品が並んでいて暖かい印象でしたし、木造でちょっと古め(笑)のギャラリー空間が醸しだしている居心地のいい空気感によくマッチしていました。“時間を経てきた場の力”というのはあるかもしれないですね。 KS● 現在(2004年3月17日時点)、法人塾生・継続研究生を含めて応募者は70名前後となりました。いま、事務局で応募動機を読んでいる最中で、明日には平良塾長と選考会議をします。今年は四国の徳島や新潟他、地方の応募が多々あり、気骨のある内容が目立ちます。 |
※この対談はインターネットを経由したバーチャルコミュニケーション
であり、
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YM● どうもありがとうございます。そうですね、そうした人脈の広がりが出てくると有意義ですし、また楽しいですね。それで、そのテーマ『ほんとうの豊かさとは何か?』にも関連があると思うのですが、前回の#7の最後でちょっとお話しました 『かんかん森』というコレクティブハウジングの先導事例(荒川区東日暮里に2003年5月末に竣工)と、古民家を改修して小規模なシェアードハウスとして使っている 『松陰コモンズ』(世田谷区世田谷で約2年前にスタート)に、取材に行ってきました。どちらも、#6から批判の的(笑)になっている「超高層マンションに住む」とかとは違う“豊かな住まい方”をされていました。何がキーワードかと言うと、“コミュニティ”の存在ということなんですね。これは、コレクティブの根幹的な考え方ですね、運営に関わっているNPOであるCHCのサイトにも、 各事例のHPへのリンクを含め、いろいろと情報が出ていますけれども。 KS● ふーむ、「コミュニティの存在……」ですか? これからの住まいを考える上でとても重要なことのように思えますが、もう少し具体的に聞きたいな。まず『かんかん森』の名前の由来から始めて教えて下さい。 |
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YM● 名前の由来なのですが、“かんかん”とは“神々”を意味し、近所に猿田彦神社があり、古代には付近一帯が深い森であったという来歴に因んだものとのことで、建物前の道路の名も“かんかん森通り”、ということで、そのまま『かんかん森』となったそうです。そのHPには【(前略)コレクティブハウスの居住者自身が「森」のように生き生きとした住環境を育てよう、という意味合いが込められています。】の記述もあります。現在、年齢的には幼児から70代までの多世代・多形態な34名の方が賃貸にて生活されていると伺いました。 KS● “森のように生き生き”とね。現在、日本の森はかなり危機的な状況にはあるけれど……、「新しいコミュニティを作っていく」というモチベーションは伝わってくるね。 YM● そうですね、ぜひご感想を聞かせてください。実は、私がこの前伺ったのは定期説明会の日だったのですが、専門の研究グループ、あるいはマンション業者さん達もかなり居られました。コレクティブの考え方・システムの話から、実際の暮らしまでまとめてお話をいただけたので、よかったです。『かんかん森』の建物全体としては上記の福祉ハウスの占有度が高くなっています。外観は12階の中層のマンション風の建物になっています。コレクティブのためのエリアは2-3階ですね。 KS● マンション業者がねえ、ちょっと危ないんじゃないの? それに12階なんて、ちょっと(周囲にとっては)ひどいかもしれないよ。 |
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YM● たしかに、ちょっと突出した高さにはなってますね、元の敷地は中学校だったそうですが。ただ、“地域へも開かれた存在”になるように努力されていることは間違いないです、そうしたお話は伺っています。 KS● なるほどね。実験的な生活の試みですね。そんな中からコミュニティが徐々にできあがっていくのかな? YM● そうですね、きっと日々の生活の中で醸成されていくのではないでしょうか。コレクティブの根幹の要素である共同の夕食は週に3日、全員が交替で持ち回り5班のグループで調理にあたられるとか。3人当番は月1回ほどまわってくるそうです。機材も家庭用のものではなく、多人数分を効率よく・おいしく作れるプロ用のものも導入されていました。共同食、目的別のグループ、こうしたコミュニティの営みの仕組みは、基本的に全員参加となる定例会において決められ、修正されていくとのこと。ある居住者の方がお話されていましたが、【こうした居住者コミュニティの“ソフトウェア”は(居住前からのワークショップなどを通じて)自分達で作り、改良してきているもので、マンション業者さんが“商品”として提供していくものとは違う。コレクティブハウジングの“形態”だけを導入しても、なかなか上手くいかないのでは……】と話をしてくれました。この方はお子さんがまだ小さいのですが、【子育ての上でも、幅広い世代の方と日常的に接してもらえることでコレクティブにはメリットがある……】とも言われてました。 KS● 確かにねえ。僕なんか家族単位で暮しているから、なかなか実感がわかないけれど、おもしろそうでもあるし、なんだかちょっとめんどくさそうな感じ(笑)もありますね。慣れればおもしろいことになるのかな。時代は、もうそんなふうに動き出しているのですかねえ。ちょっとわからないところです。少なくともそこは“血縁のない家族”が集まってある種の“コミュニティ”を意識的につくろうとしているんですよね。 YM● コレクティブハウジングについてですが、鈴木さんらしいコメント(笑)ですね。『かんかん森』は、居住空間を(建物の一部を借りる形だが)新築したこと、それにコミュニティ規模を当初から30〜40名としていたことから、ワークショップや定例会などの“ソフトウェア”がある程度システムとしてきちんとしていないと、全体が立ち行かないところがあった(・ある)と思います。その意味では、完全に“住まい手による意識的なコミュニティ”の形成ですが、これはコレクティブの本質でもあります。 KS● 実はあんまり大きな声では言えないんですけど、建築塾の運営でもね、「きっちり仕組みをつくる前に、まず動いた」ということがありますね。かなりエモーショナルにね。その場、その場で一番いい判断をしながら(とまあ思っている)これまで5年間カリキュラムを積み重ねてきた。試運転の時期だったのかな? でもそろそろ意識的に仕組み(敢えて日本語で言うけれども:笑)をつくった方がいいかなと思っていますよ。 コレクティブの話からずれちゃったかな。 |
▲季刊『まちづくり』:休刊した『造景』の編集者だった八甫谷邦明氏が、『造景』の志を受け継ぐべく2003年に発行を始めた"まちづくり"のための雑誌。出版は京都の学芸出版社。 |
YM● はは……いやぁ、ほんとに鈴木さんらしい(笑)。ま、神楽坂の『一水寮』や『柿の木荘』に話を一応戻すんですが、人数的にも少ないし、世代的にも20-30代くらいで、仕事や嗜好もけっこう関係、あるいは直にオーバーラップがありますね。
生活の場となる建物も、鈴木さんを始め周りは建築関係者ばかりだから(笑)、既設のものを適宜リノベーションして使ってるわけですしね。ま、なにより鈴木さんの“親派”ということで、“定義的なコミュニティ”というより“コミューン”に近い様子で自然に集まってきてる感じがあるし、ちょっと“結晶成長”に似てるかも。 KS● 築150年の古民家を残していく、活用していくという大きな(思想的)柱はとても貴重ですね。僕なんかは、そういう場所こそ、集まって住むことの本質を体全体で感じられるんではないかと思いますね。地上から浮いた高層ビルではないわけだし、限りなく地べたに近い。そこでは農作業なんかもできたりするだろうし、ちょっとした小屋もできてアトリエになったりする、というようなことまで夢想しますね。とても“人間的な生活”になるはずですよ。そういう芽をいっぱい増やしていって、それをうまく繋げていって都市も捨てたもんじゃないな、っていうところまでいかせたいですね。 YM● はは、流石の“鈴木節”ですね。期間の事情については、私もよくは存知上げないのですが……
だからこそ……の“実験”でもあるでしょう。そして、そこで培われた“ソフトウェア”は離散とかでなくって、飛び火のように広がっていくものと期待できますね。 KS● “IT化の波”の煽りで、“古いビル”の空きですか? 僕のところの高橋ビル(アユミギャラリー奥・B2が神楽坂建築塾教室)も気をつけないといけないな。いまのところ全室がオフィスなんだけれど、何にしたらいいのかな?
少しでも都市の緑化に貢献できるようなものにしたいところだけれどね。そういう意味では、ビルの前にあるちょっとしたポケットスペースに欅の木を植えたのはよかったなと思っています。あの中庭は望月さんも気にいってるでしょ(笑)。 |
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